「向付(むこうづけ)」とは、茶懐石で使われる器、もしくはその器に盛られた料理のことを「向付」と言います。お膳の左側に飯茶碗、右側に汁碗を置き、その向こう側に置かれる器(料理)であることから「向付」と呼ばれるようになりました。もともとは、なます料理が多かったそうですが、近年ではお刺身を盛り付けることが多いようです。茶懐石では食べ終わった向付を取り皿として使うため、もてなす側の茶事の趣向や季節を表す器(料理)として重要な役割を担っています。
「茶懐石(ちゃかいせき)」とは?
「茶懐石」とは、亭主が親しい人を招待し、少人数でのプライベートな集い“茶事”の中で振舞われる軽食のことです。“茶事”とは、お茶を楽しむパーティのようなもので、抹茶椀などの茶道具や掛軸などの季節の設えなどを鑑賞しながら会話を楽しみ、メインディッシュとしてお茶を頂く、その一連の流れをゆっくりと楽しむのが“茶事”となります。因みに“茶会”はお茶のみを振舞うもので、食事は「茶懐石」を簡略化した「点心」と呼ばれるお弁当が振舞われ、大勢でお茶を頂きます。近年では割烹料理店や日本料理店において、和食のコース料理を懐石と呼ぶことが多いため、“茶事”における懐石を「茶懐石」と言うようになりました。
出典:農林水産省Webサイト
・茶人に聞く、茶事をもっと身近に
・おうちで茶懐石!大切なのはお客様を思う心
旬の食材を活かした伝統的な料理を提供する割烹料理店や日本料理店でも「向付」はよく使われますが、元々は茶懐石で使われる器であり、大きさや形には特に決まりはなく、様々な形の「向付」が使われています。ここでは、唐津焼作陶家、小島直喜さんの向付を例にご紹介させて頂きます。
1:唐津焼 小島直喜「粉引向付」
2:唐津焼 小島直喜「絵唐津向付」
3:唐津焼 小島直喜「蛇蝎唐津沓向付」
4:唐津焼 小島直喜「唐津蛇蝎向付」
5:唐津焼 小島直喜「絵唐津蛤向付」
6:唐津焼 小島直喜「絵唐津蛤向付」
7:唐津焼 小島直喜「斑唐津山瀬向付」
8:唐津焼 小島直喜「斑唐津山瀬向付」
今回ご紹介した小島直喜さんの「向付」は、割烹料理店・日本料理店などでもご使用いただいております。プロの料理人も使っている「向付」をご自宅でもいかがですか。お刺身のみならず、和え物や煮物などにも最適です。唐津焼は、温度を維持する特性があるため、事前に冷蔵庫などで冷やしておくと、お刺身も冷たいまま食べることができます。食卓が一層格式高いものになり、楽しくなると思います。
※今回ご紹介した作品を含め小島さんの作品は、コチラからご覧いただけます。※小島さんへのインタビュー記事や唐津焼の歴史に興味がある方は、是非、コチラもご覧ください。
誰かに話したくなる“器”の話シリーズ
・#01|和の器とは
・#02|耳にする“景色”とは
・#03|陶器と磁器の違いとは?
・#04|御猪口・ぐい吞・盃の違い
・#05|やきもの王国九州
・#06|唐津焼で彩る食卓
・#07|唐津焼ぐい吞で春酒を愉しむ