透き通るように白い肌、涼しげな淡いブルーの釉薬、この夏『白磁の世界』をテーマに、暑い夏にぴったりの白磁作品を4人の作家と共にシリースでご紹介して参ります。
シリーズ最後を締め括る作家は、人間国宝の井上萬二さん(佐賀県有田町在住の作家)。凛とした風格と、なめらかで一点の曇りもない純白の肌に、華美な装飾は一切施さず、純白の肌と造形のみで美を表現する至高の”白磁”の人間国宝です。端正な中にも柔らかさや温もりを感じさせる作品は、高度な轆轤技術に基づいて作られ、追求を重ねたシンプルな造形美は至高の白磁とまで呼ばれるようになり、その艶やかな白い地肌に品格ある佇まいが唯一無二の存在感を放ってます。
井上萬二さんは、白磁に鮮やかな色絵を描く柿右衛門様式、その14代酒井田柿右衛門ならび白磁の大物轆轤造りの至宝とうたわれた奥川忠右衛門らに師事し、白磁製作の技法を習得されました。その後も、磁器の成形・釉薬の研究を重ねて伝統的な白磁製作の技法を極め、「現代の名工」労働大臣表彰や日本伝統工芸展で文部大臣賞などを受賞されます。そして遂には1995年、重要無形文化財(人間国宝)の白磁保持者に認定されます。
伝統的な白磁製作の技法を極め、至高の白磁と呼ばれるようになった井上萬二さんの作品を、ご紹介させて頂きます。今回ご紹介する作品は、白磁の美しさを際立たせるために、花の文様を白磁に彫り込み、釉薬の掛け分けにより“白”と文様の美しさを表現した作品となっています。重要無形文化財「白磁」保持者である井上萬二さんが作った一点物の作品であり、世界に2つとない逸品です。
※全て最高級の原料(天草陶石)を使い、轆轤にて形成、カップの容量は一般的な120ml程度です。
井上萬二 作|白磁緑釉牡丹彫文 紅茶碗(一点物)
しっとりとした純白の肌に、牡丹の文様を彫り込み、柔らかな緑釉で仕上げられた作品です。紅茶碗ということもあり口縁の径は珈琲碗よりも広く、紅茶の色と香りがより一層楽しめます(口径を広くすることで熱を逃がしやすくしています)。また、口縁の径に合わせ高台が高くなっており、美しさと気品を感じる造形となっています。紅茶碗に描かれた牡丹の文様は、正面と裏面、いづれにも描かれています。
井上萬二 作|青白磁薔薇彫文 珈琲碗(一点物)
全体に掛けられた柔らかな緑釉の中に薔薇の文様が彫り込まれ、純白の薔薇として仕上げられた作品です。また、井上萬二さん特有の高台に向かって引き締まる造形がシャープな印象を与えスタイリッシュな珈琲碗となっています。珈琲碗に描かれた薔薇の文様は、正面のみとなっています。
井上萬二 作|白磁緑釉椿彫文 珈琲碗(一点物)
しっとりとした純白の肌に、椿の文様を彫り込み、柔らかな緑釉で仕上げられた作品です。カップは椿にも似た丸みを帯びた造形となっており、柔らかで優しい印象を与える珈琲碗となっています。珈琲碗に描かれた椿の文様は、正面と裏面、いづれにも描かれています。
井上萬二 作|白磁緑彩釉桜彫刻 珈琲碗(一点物)
しっとりとした純白の肌に、桜と枝の文様を彫り込み、淡いピンクと淡い緑の釉薬で仕上げられた作品です。また、井上萬二さん特有の高台に向かって引き締まる造形がシャープな印象を与えスタイリッシュな珈琲碗となっています。珈琲碗に描かれた桜の文様は、正面のみとなっています。
井上萬二さんのプロフィールや作品に関しましては、以下にて詳しく説明していますので、是非、こちらもご覧ください。https://andpolite.com/collections/manji-inoue
備考:今回ご紹介する作品は、全て井上萬二さんご本人の作品となっています。作品には全て共箱が付いており、本人の証しである「萬二作」の銘が入っています(窯作の場合は「萬二」の銘となります)。