透き通るように白い肌、そして涼しげな淡いブルーの釉薬、この夏『白磁の世界』をテーマに、暑い夏にぴったりの白磁作品を4人の作家と共にシリーズでご紹介して参ります。
シリーズ三人目の作家は、辻拓眞さん(佐賀県有田町在住の作家)。代々辻家が手掛けているのは、日本・世界の情景が描かれた陶板シリーズ。陶板は制作途中で割れてしまうことも多く、熟練された技術が必要ですが、一度焼き上がれば、色褪せない磁器の絵画となります。また、陶板シリーズ以外にも新しい磁器の表現にも挑戦されており、近年はステンドグラスをモチーフに宝石のような輝きを放つ「ぐい吞」や「カップ」なども積極的に作陶されています。
伝統技法を受継ぎながらも、新しい磁器の表現を追求されている辻拓眞さんの作品を、いくつかご紹介させて頂きます。
まずは、代々辻家に受け継がれている陶板シリーズ。針や彫刻刀を使い磁土に絵を描く聡窯(そうよう)独自の”線刻技法”で描かれた作品です。筆を使い絵を描く有田焼では、あまり見かけない技法です。磁土である生地を丁寧に彫ることで、絵に奥行きと立体感が生まれます。キャンパスとなる磁土には天草陶石を使用。強度があり硬く、仕上がりの色は濁りがなく美しい白磁となります。
拓眞さんは、新しい磁器の表現にも挑戦されており、特にステンドグラスをモチーフとした作品は、宝石のような輝きを放っています。
こちらの作品(写真)は、切継技法により製作(一度形成した器を切って解体し、また組み上げ繋ぎ直し形成)。ステンドグラスのように継目に銀彩を施すことで、宝石のような複雑な光沢感が生まれています。
有田焼 辻拓眞「Belted」-cup&saucer-[一点物]
針や彫刻刀を使い磁土に絵を描く聡窯(そうよう)独自の”線刻技法”で描かれた作品です。線刻による微細な七宝文様が複雑な光沢を生み、白磁の余白とのコントラストが器に奥行を感じさせます。作品名の「Belted」は、和装の帯をイメージしネーミングされています。有田焼らしい華やかな色彩も魅力です。
有田焼 辻拓眞 線刻吹墨小鉢「雨薫る」[一点物]
紫陽花を”線刻技法”(針や彫刻刀を使い磁土に絵を描く聡窯独自の技法)で描き、雨降る空気感を有田焼の伝統技法”吹墨(ふきずみ)” で表現した作品です 。小ぶりなサイズではありますが、深さがり、様々な用途にお使い頂けます。
有田焼 辻拓眞 盛上銀彩豆皿「ナンテン」[一点物]
”一珍(いっちん)”という技法を使い、銀彩で装飾を施したシリーズです。細かな凸凹が銀彩の光沢を際立たせ、器がアクセサリーを纏っているような印象です。イメージはステンドグラス、銀彩は希少価値の高い貴金属パラジウムを使用。図案のナンテン(南天)は、古くから、「難を転ずる」の語呂から縁起のいいものとされています。現代でも、縁起物や厄除けとして、お正月飾りとして使われたり、松や竹とともにお正月の花として玄関や床の間に飾られることもあります。
拓眞さんのプロフィールや作品に関しましては、以下にて詳しく説明していますので、是非、こちらもご覧ください。